【環境と経済の両立を目指す産官学の共創と地域課題解決の実践!】「防災すごろくカレー」とスマート農業が示す、新しい農業のカタチと地域連携のカタチ【第2回ウマバSDGsアカデミー活動報告】
- 勇起 床桜
- 2026年1月1日
- 読了時間: 11分
更新日:17 時間前


目次
7:みどりの食料システム戦略:2050年ゼロエミッションを目指す農業イノベーション
8:徳島県GX推進計画とネイチャーポジティブの実現
9:若者の視点で防災を変える:徳島県西部産食材を活かした「すごろくカレー」の開発と社会実装
1. 官民協働による社会価値と経済価値の両立

(一社)四国まんなか創造推進協議会 丸浦世造 氏
https://www.miyoshi-mirai.jp/
建設会社を経営しながら三好市のまちづくりに携わる丸浦氏は、行政(官)と民間(民)が協力する「官民協働」こそが、人口減少時代における新しいサービスの形であると説きます。
かつては利益追求を最優先していた民間も、現在は社会貢献を重視する方向へ変化しています。官民が連携し、民間の資金力やノウハウを活かした新しいサービス市場を創出することで、CSV経営(共通価値の創造)の理念に基づいた社会貢献と経済の両立が可能になります。
また、地域の担い手不足を解消するため、若者や企業人材を呼び込み「関係人口」や地域で活躍する人材を増やすことが重要です。丸浦氏は課題解決のステップを五段階(ゴールの共有、企画化、実施計画、実行、継続的な運営体制)で示し、これらを通じて社会価値と経済価値の同時実現を目指しています。

【感想】 行政と民間の協力が、サービスの質向上や新しい価値の創出に直結することを実感しました。人口減少は全国的な課題ですが、地域内外の多様な人々が関わることで、持続可能な地域づくりが実現できると強く感じました。
レポート担当:徳島文理大学 安部颯人 金野真人
2. スマート農業が拓く10年後の農業の姿

講師:(有)樫山農園 樫山直樹 氏
https://kashiyama-farms.com/company/
フルーツトマトや米・麦・大豆・葉物野菜・菌床椎茸など幅広い種類の農作物を生産し、販売している樫山さんは4つの取り組みを行い「スマート農業」を実践されています。
リゾケア湛水直播: コーティング種子を直接水田にまくことで、育苗・田植えを省き大幅な省力化を実現します。
二期作: 刈り取りの高さを調節して再生を促し、1年で2回の収穫を可能にします。
次世代型農機: GPS付き自動操舵農機で精度の高い走行を実現し、ドローン活用で手作業だった箇所の農薬散布負担を軽減します。
管理ツール: 従業員の作業記録や衛星データ、病害予測ツールを活用して業務を効率化します。
また、温暖化対策として高温耐性品種「にじのきらめき」の導入や、初期費用を抑えるためのリース活用・規模の経済による収益確保など、環境変化や経営リスクへの具体的な対応策も示されました。
【感想】 技術の導入自体を目的とするのではなく、「省力化」や「担い手不足対策」といった農業の本質的な課題解決に結びつける明確な目的意識に感銘を受けました。技術を「何のために使うのか」という強いメッセージは、学生にとっても非常に理解しやすく、学びの多い講義でした。
レポート担当:徳島文理大学 吉田空生 鈴木理子 畠山栞音
3. 信念が創り出した新感覚:「松きのこ」開発30年の軌跡と本物へのこだわり

(有)世羅きのこ園 東山 正 氏
世羅きのこ園の東山会長が開発した「松きのこ」は、シイタケの菌をベースにしながら、マツタケのような見た目と香りを持ち、生食も可能な新感覚のきのこです。開発の背景には、かつてマツタケの名産地だった世羅町に再び活気を取り戻したいという強い想いがありました。
開発までの道のりは険しく、独学で研究を始めてから30年もの歳月を要しました。一度収穫に成功しても同じ品質を再現できないといった苦労の連続でしたが、「できないと言われたくない」という一心で研究を重ね、独自の栽培技術を確立されました。
東山氏は「糖度が高いなどのつくられた味ではなく、自然界でできた本物を残すべき」という信念を持ち、大規模農業では真似できない、安心・安全なものづくりを追求されています。
【感想】 現在、ウマバプロジェクトで取り組んでいる「松きのこ」の背景にある、並々ならぬ苦労と情熱を知ることができ、非常に貴重な時間となりました。人手不足が深刻な一次産業において、「本物をつくる」という信念で同業他社との差別化を図る東山会長の姿に、強い感銘を受けました。
レポート担当:徳島文理大学 植村理子 吉田空生
4. 官民協働による「横展開モデル」の構築:ウマバプロジェクトが目指す3つの柱と中間団体の役割
(一社)四国まんなか創造推進協議会 丸浦世造 氏
現在の三好市では、特に20~30代の若年層の減少が深刻な課題となっています 。これを受け、若者や企業人材を呼び込み「関係人口」を創出することを目的に「ウマバプロジェクト」が立ち上がりました 。本プロジェクトは、以下の3つの柱を軸に、他地域へ「横展開できるモデル」の構築を最終ゴールとしています 。

関係人口・活躍人材の創出
先進的な営農型再生可能エネルギーの推進による脱炭素への貢献
大規模災害時における「安心・安全な暮らしづくり」への貢献
プロジェクトの核となる「四国まんなか創造推進協議会」は、官と民の橋渡しを担う「中間団体」です 。行政だけでは踏み込めない領域を民間のノウハウで支援する「官の民営化」や、収益性の低い公共サービスへ民間が参入する「民の公共化」を推進しています 。 この仕組みにより、三好市のみならず他地域への貢献やモデルの横展開が可能となり、新たな価値の創出が期待されています 。
【感想】 行政主導になりがちな地域振興において、中間団体を介して「官」と「民」双方の悩みに寄り添う柔軟な連携のあり方に、新しい可能性を感じました 。単なる振興策に留まらず、脱炭素や防災といった社会的課題をビジネスや暮らしに統合している点が非常に特徴的です 。
「関係人口」から一歩進んだ「活躍人材」を育成する考え方は、地域との長期的かつ双方向的な関係を築く上で極めて重要であり、三好市全体の魅力向上に繋がると確信しました 。
レポート担当:徳島文理大学 樫本由衣 松本千紘
5. 次世代型ソーラーシェアリング2.0と防災拠点の構築
(株)シーラーソーラー取締役 小西豪 氏
(株)Pine Hill Group 松岡栄治 氏
ウマバ地区では、発電事業者・営農者・再エネ需要家が一体となった「次世代型ソーラーシェアリング」の導入が進んでいます。10月半ばでも最大値に近い発電量を維持する高い効率性を誇り、地域内でのエネルギー循環を実現しています。
また、併設された「防災ビニールハウス」は、災害時に電力を自給できるオフグリッド型の防災拠点として機能し、雨風をしのぐシェルターや生活基盤を確保する役割も担っています。今後は、換気や空調などの課題改良が進められる予定です。
【感想】 ウマバスクールコテージに隣接する実証プラントを視察し、室内いっぱいに栽培された「松きのこ」の迫力に圧倒されました。開発者である東山さんの長年の苦労が詰まった松きのこは、交流会でいただいた際の美味しさも格別でした。最先端の農業技術(ソーラーシェアリング)が、こうした素晴らしい地域資源を守り、次世代へ繋ぐ基盤になることを期待しています。
レポート担当:徳島文理大学 樫本由衣 松本千紘
6. 関係を“継続”させるコミュニティ設計

マチアスデザイン 横山喜一郎 氏:キャリアデザイン
四国まんなか創造推進協議会のディレクターも務める横山氏は、地域外の人々が一時的な訪問で終わらず、継続的に関わり続けるための3つの具体的な仕組みを紹介されました。
三好アルムナイ: 過去の来訪者(卒業生)と地域課題を議論し、各自の「やりたいこと」を掛け合わせて、居酒屋再生や農林体験などの新プロジェクトを創出する取り組みです。
三好ミドルシニアブートキャンプ: 都市部企業のミドル・シニア層を対象とした越境研修。地域との交流を通じて、参加者のキャリア形成と三好市への定着を促します。
四国建築学会ワークショップ: 全国の建築学生がウマバに集い、地域住民との交流を通して課題解決を学ぶ場です。リピーターの学生も増え、着実な繋がりが生まれています。
【感想】 特に「三好アルムナイ」の、地域と外部の人が協力して実際に新しいプロジェクトを生み出す「継続させる仕組み」が非常に印象的でした。地域課題を解決するだけでなく、そこから新しい人の繋がりが派生していく様子に、関係づくりの本質を学びました。地域との関わりを一度きりで終わらせず、長く続く関係を育てていくことの重要性を、今後の自身の活動にも活かしていきたいです。
マチアスデザイン 横山喜一郎 氏:キャリアデザイン
7:みどりの食料システム戦略:2050年ゼロエミッションを目指す農業イノベーション

農林水産省中国四国農政局徳島県拠点 総括農政推進官 犬伏雄人氏
気候変動や激甚化する自然災害、深刻な担い手不足といった農業界の危機を背景に、農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を策定しました。この戦略は、食料の調達から生産、加工、消費に至るサプライチェーン全体で環境負荷の低減を目指すものです。
2050年までのゼロエミッション化や化学肥料の使用量低減、有機農業の拡大など、14の数値目標(KPI)を設定。スマート農業技術の普及支援や補助金制度を通じ、イノベーションによる持続可能な食料システムの確立を推進しています。令和4年には法整備も行われ、国を挙げて環境と調和した農業への転換を加速させています。

【感想】 温室効果ガス削減への貢献度を星の数で示す「みえるらべる」の取り組みが非常に印象的でした。普段の買い物で目にする農産物にこうした表示があることで、消費者も農業の環境問題に主体的に関わることができます。これからの時代、AIやIoTといったスマート農業技術の導入は、環境保全と農業継続の両面で欠かせないものになると強く実感しました。
レポート担当:徳島文理大学 山下竜輝 福田一樹 坪田陸
8:徳島県GX推進計画とネイチャーポジティブの実現

徳島県サステナブル社会推進課 松本進一 氏
徳島県では2024年3月に、脱炭素関連の計画を統合した「徳島県GX推進計画」を策定しました。最大の特徴は、国の目標を2年前倒しし、2028年度までに温室効果ガス排出量46%削減(2013年度比)を目指すという野心的なスピード感です。さらに、2030年にはクリーンエネルギー電力自給率70%、2050年には排出量実質ゼロという高い目標を掲げています。
具体的な施策として、初期費用0円で設置可能なPPA・リースモデルの普及や、県有施設への太陽光パネル率先導入、ZEV(電気自動車等)や水素エネルギーの利活用を推進しています。
また、コスト面が課題だった自然保全を、金融機関や一次産業と連携して「経済的価値」へと変える「ネイチャーポジティブ経済」への移行にも注力しており、環境保全と経済成長の両立を図っています。

【感想】 「脱炭素」という言葉をどこか他人事のように感じていましたが、県の具体的な数値目標や先進的な支援制度を知り、当事者意識が芽生えました。行政の取り組みをただ利用するだけでなく、私たち一人ひとりが日々の生活の中で「何ができるか」を考え、主体的に行動していくことが、大きな社会変化を生む鍵になると強く実感しました。
レポート担当:徳島文理大学 佐々木 凛 上杉日南
9:若者の視点で防災を変える:徳島県西部産食材を活かした「すごろくカレー」の開発と社会実装

床桜3年ゼミでは、日常生活の中で自然に備蓄を行う「シームレスな防災備蓄」をテーマに掲げ、独自の防災備蓄食品を開発しています。学生アンケートで明らかになった「備蓄は面倒」「お金をかけたくない」という高い障壁を打破するため、以下の2つのアプローチを採用しました。
「美味しさ」で選ばれる地域食材の活用: 「松きのこ(世羅きのこ園)」、「阿波尾鶏」、「ごうしゅういも(そらの郷)」といった徳島県西部産の特色ある食材を贅沢に使用。これまでの「防災食はおいしくない」という常識を覆す味わいを目指しました。

「楽しさ」で継続させるゲーム要素: パッケージを揃えることで「すごろく」として遊べる仕掛けを導入。備蓄を楽しい体験に変えるだけでなく、ゲームを通じて防災知識を学べる教育的価値も持たせています。

今回のウマバプロジェクトでは、製造をエイブルフーズ、ラベルデザインを海野氏が手掛けた試作品「ウマバ防災すごろくカレー」をお披露目しました。今後はハレとケデザイン舎とも連携し、さらなる改良と商品化に向けて開発を継続していきます。
【感想】 地元のプロフェッショナルの協力のもと、自分たちのアイデアが形になる過程に大きなやりがいを感じました。単なる「食料の備蓄」に留まらず、地域食材の魅力発信や防災教育、そして何より「楽しさ」という付加価値を加えることで、若者や備蓄をしていない層に届く新しい防災の形を提案していきたいです。
レポート担当:徳島文理大学 安部颯人 植村理子 金野真人 吉田空生
全日程の総括
本年度に入り2度目の雲海塾も、学生にとって多くの学びを得る機会となりました。特に、今回はウマバスクールコテージに併設されているソーラーシェアリング実証プラントで実際に松きのこの栽培が行われており、中を見学することができました。これまでソーラーシェアリングの仕組みなどについてはお話を伺ってきましたが、実際に栽培されている様子を見ることができ、非常に感動しました。
また、松きのこを使用し、現在3年生が防災備蓄食品を開発しています。三好の食材も使用されており、この取り組みが防災だけでなく三好の地域課題へ貢献することも期待できます。
学生の世代は移り変わっていきますが、先輩方からバトンを受け継ぎながらこれからもこのウマバを拠点に多くの方々と交流して学びを得ていきたいと思います。
レポート担当代表:徳島文理大学 樫本由衣











































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